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古本LOGOS 月1,2回古書店。(リターンズ)

本は他人に渡りページを開かれることで、新しい力を得る。

11月某日  寒くなったり、暖かくなったりで身体がついていかない。
      週末、お孫様が来て(賞味滞在時間約3時間)そのために
      大掃除をした。一人だけではにっちもさっちもいかなかった
      古本に占拠されていた部屋が、人を通せる程に片付いた。

      そんなこんなでレンタルDVDをようやく見た。 
      ほんと、一世代か二世代遅れているが、未だに映画は
      映画館か、BS再放送の録画が、郵送レンタルDVD。
      車で聴くのはCD(もしくはDVD)、家ではレコード等。
      昭和を引きずっています。サブスクとか、見放題ってなんか苦手。
      やっと最近、YouTubeの映像検索が出来るようになった。
      料理の作り方とかね。クィーン(F.マーキュリー)の映像とか。

      それより、見たDVD映画は「丘の上の本屋さん」。イタリア映画。
      ナポリ近郊の静かな街の、高台の石畳広場の一画に、隣がカフェの、
      小さなお店スペースがある。商店街というほどでもないが、
      見晴らしもいいし、通り道になっているようで、「自由」という意味
      の名前を持つ初老の男性が一人で店を開けるシーンから始まる。
      鍵をポケットのどこに入れたのか分からなくてまごついてると、
      隣のカフェに勤める若い男性が、ズボンの後ろポケットだよ、
      と助けてれるし、朝のコーヒーも運んできてくれる(仲良し)。
      基本的には暇そうな店なのだが、いろんな人がやってくる。
      「君」という言葉はスペイン語みたいだから使わない、と言って
      「諸君」としか言わない『我が闘争』の初版本を探している男。
      仕事場のマダムから「フォトコミック(ハーレクインみたいな?)」
      を探してきて、と頼まれ駆け込む若い女性。ゴミ収集をしている
      男は「ゴミ箱に本が捨てられていたぜ」と言って、古い日記ノート
      と共に、何冊かの本を持ち込み、買い取りをねだる。

      店主リべロは、時には辛辣に、時には正直に、時にはお付き合いで
      それぞれの求める本やお金を上手に動かす。だってここは買い取り
      もする古書店なのだから。しかしある時、店の外に出してある均一箱
      の漫画を見ている少年と出会う。少年の肌の色は白くはない。
      ブルキナファソから6年前に(家族で、だと思う)移住してきて、
      イタリア語は読めるし書ける、でもお金は使わないようにしてるから
      マンガ、読みたいけど買わない、と言う。
      その少年に、店主は言うのだ、「好きな本を持っていっていいよ。
      明日返してくれればいい。大切に読んでくれ。」
      少年の選んだ漫画は、ミッキーマウス。学校が休校になり
      時間を持て余していた彼は、すぐに読んで、またリべロの店に来る。

      それからリべロは、じつに上手にこの少年に読書の楽しみを
      手解きしていく。最初の2冊はコミックブック、それから児童文学、
      ピノキオ、ロビンソン・クルーソー、星の王子さま、イソップ物語、
      それから「モビー・ディック」に「ドン・キホーテ」。もちろん
      イタリア語訳だろう、しかし少年は、医者になりたいという希望
      も持っているようで、「シュバイツァー」の伝記も手にする。
      古本屋の主人が、少年に無償で本を貸し出し、そして返しに来ると
      「この本はどうだった?」と、本の感想も語り合う.これは
       まるで、家庭文庫、もしくは図書館司書の仕事場ではないか!
 
      時代は現代に近いイタリアの小都市で、もちろん人はPCで
      検索して本を買えるし、モバイルスマホでなんでも探せる。
      しかしいまだに、黒電話を使う高齢者の話や、1000年前の
      「カッパ印刷(活版印刷)の本」の話がでたり、セネカや、
      「それぞれの時代の発禁本コーナー」なども設けてあり、
      本や活字、石文化の西洋、しかもローマ、ラテン語がとても
      近くにあることが感じられる。。。。

      この映画は、ユニセフに捧げられており、移民問題を抱える
      ユーロ圏ならではの理想主義が見え隠れしないでもない、でも
      古書店主がいつも座って仕事や読書をする椅子とテーブルの後
      の壁には、「本は持ち主が変わるたびに、新しい命を吹き込まれ
      ページを捲ることで新たな価値を生み出す。(うろ覚え)」
      という文が書かれた額がかけられている。これがこの古書店主の
      揺らがぬポリシーなのだろう。

      そうか、古本屋でも家庭文庫のようなことをしてもいいのだ!
      図書館でも貸本屋でもいいのだ。お金のことに目がくらみすぎて
      ここ数年、大切なことを見失っていた気がする。
      映画のラストはネタバレになるから書きませんが、
      「マイ・ブックショップ」よりはあと味が良い。希望がある。
      まあそれも好みでしょうが。。。。
      自分もこういうふうに年を取って死んでいきたい、と思った。
本は他人に渡りページを開かれることで、新しい力を得る。_c0107612_21390676.jpeg

# by iwashido | 2023-11-27 21:40 | 読書日記 | Comments(0)

暦の上ではNovember。

11月某日 寒い。真冬並みに寒い。一ヶ月前まで半袖でも過ごせた
      陽気が嘘のよう。立冬が過ぎ、季節は確実に動いている。
      コタツ出す。ますます仕事したくなくなって、テレビドラマの
      再放送や、過去のハードディスク録画作品などを観て過ごす。
   
      はじめ「駅 STATION 」(高倉健主演)などを観ていたが、
      その前に「あまちゃん 総集編(後半)」があって、そちらも
      ズルズルと観てしまう。あまちゃんの最後って何気にスルー
      してたけれど、こういう話、オチだったのね。
      親子三代に渡るドラマ。母と娘、祖母と孫。親の不本意な
      負債は、子どもが利息つけて返したる、そんな感じ?
      でもそこをキョンキョンと、のんの、二人の個性的なキャラが
      力まずやってのけるのがいい。

      ゆいちゃん(潮騒メモリーズの可愛い方)は、事情で2回も
      東京に行けなかった。一回目は、お父さんが倒れた、二回目は、
      あの東日本大震災。3月12日のコンサートを見るために、
      3月11日の電車に乗る、という設定が絶妙。そう、その日に
      何かが起こるなんて、過去の私たちは想像も出来なかった。
      そう、あまちゃんは、岩手のドラマ、地元がテーマ。
      そして、ゆいちゃんは決心する、「私、一生ここから
      でない、どこにも行かない、私に会いたかったらそっちから来い!」
      と。。。。

      これはすごい覚悟だ。そして本当に、ゆいちゃんの元に
      都会に憧れていた頃の重要人物が集まって来る。
      そしてその時、ゆいちゃんは居た堪れなくなってトイレに隠れる。
      なんで? なんで今頃になってみんな来るの? 地震があったから?
      自分を信じることができないゆいちゃんの気持ちが伝わる。

      まず動くこと、手を動かすこと、出来ることをすること、
      そんな当たり前のことが私にはちょっとわからなくなっていた。
      遠い理想の前に、手の届くところの洗濯物畳みや、食器片付け、
      本の在庫確認や値段付け、遠くへ気を飛ばす前に近場の作業を
      整えていくこと。それ無くして何も成すことは出来ないだろう、
      そう思う秋の一日であった。
      雷も止んで陽が差して来ました。虹が見えるかな?
暦の上ではNovember。_c0107612_14443046.jpeg

# by iwashido | 2023-11-18 14:44 | 季節のできごと | Comments(0)

駆け足で 立冬来るも 置きざるる

11月某日  最高気温25度越えなんて言われた次の日の朝の寒いこと。  
      今日は雨まで降ってきて、蟹漁解禁、お鍋が恋しい。
      ん-、宇宙遊泳から戻ってきた宇宙飛行士が日常生活の重力に
      慣れるのに時間がかかってるって感じかな・。。。なんとなくイマイチ。
      この状況を「ツマラナイ」とつぶやくのは簡単だ、でもそういうこと
      じゃない、ここを乗り切るのだ、今まで自分がないがしろにしてきたことを
      ちょっと見直すのだ、一日おきに指定された接骨院にリハビリに通い、
      週明けまでの目録原稿締め切りのためのデータを入力し、
      二階を片付け、ちょっと掃除をする。誰かが来ても見せられるレベルに。

     自分の勇気のなさが悔しい。なさけない。
     失敗を恐れ努力を放棄し、長年コツコツと努力をして地位を築いた知人を
     ねたんでいては虎になってしまう(山月記/中島敦)。
     
     少なくとも手を差し伸べてくれようとしている人との関係はなんとか維持したい。
     明日をもしれぬ我が命、今日も地震がありました(2時半頃)。
     揺れるとやっぱり怖いんだよねー。。トラウマ? ウシトラ? ウマウシ?
     楽しいことを考えよう。

     今日食べたツナサンド、たっぷりのカフェオレ、夕ご飯のキーマカレーなどなど。
     わたしはいままで何を見てきたのだろう。
     わたしの眼は節穴なのだろうか。
     白鳥の鳴き声と、キジの鳴き声の区別がつかない。
     どんどんと本など手放して自由になって身軽になって進んでいきたい。
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# by iwashido | 2023-11-10 16:36 | 季節のできごと | Comments(0)

自省録を読む理由

10月某日 良いお天気である。シャワーも浴びて散歩して、
      あとはしばしのフリータイム。読書にも没頭できる。
      書くことへの集中や没入も厭わないはずなのだが。
      持ってきた本1冊は読了、さし入れを頼んだ2冊のうちの
      1冊の漫画を繰り返して読んでしまうため、なかなか本丸に
      至ることができない。残り時間も少なくなってきました。

      マルクス.アウレーリウスの『自省録』を有名にしたのが
      この漫画、『ミステリと言う勿れ』田村由美作、ドラマ化され
      ちょっと前まで全国映画上映中だったと思われます、一部では
      今もやっているのかな。マンガに出てくるライカさんは、
      自省録をほぼ暗記しており、何ページの何行目の何個目の文字か
      覚えていて、数字で思いを伝える。昔の暗号機のよう。
      元になっているのが『自省録』っていうのがちょっといい、
      ソクラテスやプラトンでは重すぎる、デカルトやスピノザでは
      近すぎる、ローマの皇帝がギリシア語で残した日記のような
      もの、自省録。このブログが千年後に残ることはないと思うが、
      西暦121年に生まれた男(ハドリアヌス帝の次のローマ皇帝)の
      言葉が今にも残っているなんてすごいじゃないですか。

      アウレーリウスはストア派と呼ばれる思想を受け継いだので
      書いてあることはカエサルのように派手ではない、自慢も
      ひけらかしもない、文中にでてくる「君」とは自分自身のこと
      であると考えられる、誰かを啓蒙しようとか、自分の手柄を
      殊更見せつけようとかは考えてもいない。。。。

      「死は誕生と同様に自然の神秘である。同じ元素の結合、
       その元素への分解であって、恥ずべきものでは全然ない。
       なぜならそれは知的動物にふさわぬことではなく、また
       彼の構成素質の理法にもふさわぬことではないからである。」
        「第四巻ー五」私の持ってる岩波文庫では52p。

       死とか自然とか、欲をもつ必要はない、今のありのまま
       で全て充足している、死はすぐそこにやってきている等、
       今流行りの前向き思考、意志でなんとかなるとか、
       願えば叶うとか、そういうポジティブさはない、
       でも人間が本当に追い詰められたとき欲しい言葉はどれか、
       明日にでも死はやってくるかもしれないと思えば、
       なんと言うか一種の開き直り、諦念、あるがままの自然、
       そういうものに目が開かれる。。。。
自省録を読む理由_c0107612_15473221.jpeg
       病院で自省録、はなかなかいいです。
       もちろん漫画もセットで。次は國分セットに挑戦だ!
       中動態の世界、を読了するのが今回の主目的だったのだが。。。

# by iwashido | 2023-10-26 15:48 | 読書日記 | Comments(0)

万物は流転する

10月某日 今日がいつだかわからない。
      ここはどこ。わたしは誰。
      某系列中古車販売店経由で、関東地方からとある車を購入した。
      ダンナの還暦祝いの、赤いちゃんちゃんこのようなものである。
      そしたら、納車後10日もたたないうちに、あるランプが点灯。
      取り扱い説明書には、販売店かディラーに連絡せよとのこと。
      そんなんで彼女は入院することになり、連れて行かれた。

      知り合いの個人自動車修理工場をやっている行きつけのSさん  
      の説明によれば、「最近の車は、排気ガスを最小限に抑えるために
      温度や湿度、環境に応じて全てコンピュータ制御されている。
      おそらく陸送されてきたのなら、彼女は、これまでとちがう
      データ(関東地方の天気と、北陸の天気の違い)に戸惑い、
      そのような表示が出たのでは」と助言いただく。
      そうか、車でも、「ここはどこ、わたしは誰?」的になるのか。

      9月に、神保町に行った。その帰りに実家(上越新幹線沿線地)
      に寄り、翌日墓参りに行き、お寺の近くにあるエコロジーショップ
      「みずすまし」にl立ち寄った。ときどき発行される通信に
      ちょっとした文章、つぶやきエッセイを載せてもらいながら
      久しく立ち寄ってなかったお店。店長のKさんの、手描きの、
      肩の力の抜けた、今を存分に生きよう、マイペースで、
      自然食関連調味料や、小物、歯磨き粉やシャンプーなどを
      扱っているお店である。その時はKさん、いつもどおり
      元気そうで、ちょっと痩せたかなーとは思ったけれど
      今年は暑かったね、とか、地震大丈夫だった?とか
      世間話をして、あまり荷物を増やしたくなかったので
      小さい小皿と、ジュースと、油揚げとかだけ買って帰った。
      ちょうどお店に来た方に、近くの駅まで送ってもらい、
      和倉温泉とか行きたいですというので、名刺を差し上げた。

      そしたら、その彼女から昨日ショートメールメッセージが
      届いた。「みずすましのKさん、亡くなったようです」と。
      びっくりしてすぐ電話をかけた。
      実家にいる妹から、今日の地方紙に載ったお悔やみ案内の
      画像を見てやはり現実なのだ、と確信した。
      あの時、もっと欲しい商品があったのに。
      本当は一回り大きいお皿が欲しかったのに。
      次の原稿、書かなきゃ、、、と思っていたのに。

      逆にいえば、あの時会いに行っておいてよかった。
      行かずに帰るという選択肢もあったのに、今日は行こうと
      その時は思った。Kさんのマイペースな生き方、お店の
      運営の仕方を学びたい。好きなように生きよう。
      マイペースで生きよう。人生は短い、そして
      万物は流転するのだから。。
万物は流転する_c0107612_17353110.jpeg

# by iwashido | 2023-10-15 17:35 | 朔のつぶやき | Comments(0)

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