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古本LOGOSの 月1,2回古書店。

百年前の言葉に。

夏目漱石は、1914年11月、学習院で
「私の個人主義」と題した講演を行っている。(以下、一部を転載)

・・・私はこの世に生まれた以上何かしなければならん、
 といって何をして好いか少しも見当がつかない。
 私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独な人間のように
 立ち竦んでしまったのです。
 そしてどこからか一筋の日光が射して来ないかしらんという希望よりも、
 こちらから探照灯を用いてたった一条で好いから先まで明らかに見たい
 という気がしました。・・・・(中略)・・・
 私は私の手にただ一本の錐さえあればどこか一ヵ所突き破って見せるのだがと、
 焦燥り抜いたのですが、あいにくその錐は人から与えられる事もなく、
 また自分で発見する訳にも行かず、
 ただ腹の底ではこの先自分はどうなるのだろうと思って、
 人知れず陰鬱な日を送ったのであります。・・・

  (夏目漱石「私の個人主義」、『ちくま日本文学全集023 夏目漱石』より)

百年近く前の言葉ではあるが、リアリティを持って迫ってくる。
大学の比較哲学(だったかしら?)の講義か演習で、
K先生から教えてもらっていたのは覚えている。

手にしているものが、己の「錐」であると
信じられるかどうか。
by iwashido | 2011-10-21 09:08 | 読書日記 | Comments(0)

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