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LOGOSさんの月に1,2回古書店

会うはずの ない本に出会う 古本屋

「神経衰弱」が得意だった、というと、大概の人は「嫌な奴だね」という顔をする。
トランプのゲームだけど、まあギャンブル性は低くて、記憶力の勝負だから
強いヒトと苦手なヒトに分かれるよね。

なんとなく、モノの場所をぼんやりと覚えている。
明確にくっきりはっきりではない。なんかこの辺? とか
ちょっと昨日とこの本の場所違うんじゃない? とか、在ったはずの本がないとか。

先日、とある本の整理をしていて、さあもう終わりにしよう、、、と思った矢先、
一冊の本がふと目に入った。この本の題名、どこかで見た。。でもどこだったろう?
古本である、著者の名前もその時の私には初見に近かった。
でもこの人の名前どこかで見たし、この書名には見覚えが、、、と考えたら
あるHPで、「読書体験記」の優秀作品のヒトが、この本を通して得た体験を
書いたその元になっていた本であった。

本の名前は『絵のなかの散歩』(新潮社/洲之内徹・著/ハードカバー箱入)。
ある高校生が、仙台で洲之内コレクションを見た感想などを体験記に昇華していた。
私は仙台に行ったこともないし、不覚にも洲之内コレクションがどんなものか
その時は知らなかった。
白洲正子や青山二郎や小林秀雄は知っていたけど、洲之内徹は知らなかった。
私の本(文學)の知識なんてその程度。だってロゴなヒトなんだもん。

それはともかく、その本はのっけから、三男の死を知る話から始まる。
題は「あかまんま」なんて、花の名前が入ってるけどつまりは彼岸花だから
まあそういう話ですよね。
うーんなんというか、濃い文章である。ものすごく濃い塩水を飲んだような。
最近こういう文章に会わない。世に出る本は、とても薄い飲みやすい文ばかり。
1時間でわかるとか、1日1文で教養が身に着くとか、身につくわけないだろう!?
教養なんて、誰かが書いたもの鵜呑みにして身に着くわけないだろう!!
身銭を切って、疑って、恥をかいて、失敗して身につけるものだろう? 

絵の話はもちろんキレキレだし、小林秀雄がほめたくらいだから。
トップに出てくる青い魚が入ったかごを頭にのせる少女の絵もGOOD。

全部熟読してないけど、面白かったのは洲之内は戦後、故郷の松山で2年間、
古本屋をしていた、とあったこと。上手くいかなくて汁粉屋に変えて
それもまた上手くいかなくて、いろいろあって小説を書いて芥川賞の候補
に何回かなったけど、最終的に銀座の画廊の店主(管理人?)をしながらモノを書いた。
戦後だからね。岩波書店だって元をたどれば発端は古本屋らしいし。

そうか、いいんだ。上手くいかなくてもいいんだ。
この上手くいかなさはきっと何かにつながっている。
古本屋としては失敗でもいいんだ。商売になんかなるわけないんだ。

いや、私が言いたいのは、なんでここでこの本と出会えちゃうかな、ってこと。
偶然みたHPの、石川県の高校生が書いた体験記の文章を覚えていて、
その本の発端はある年の高文連の全国大会の会場が仙台で、その仙台の空が
青くて、洲之内コレクション展を仙台の美術館だかどこかでやっていて。。。ということで
その本の題名を私が覚えていたということ。出版社名や判型(単行本か文庫か)などは
わからなかった。「手に入らなければ盗んででも自分のものにしたいのがいい絵」だとか
普通言うかな? 手に入らなければ盗んででも自分のものにしたいのは、いい本なのかな?

そして箱の上の方にのっていたその古い初版の『絵のなかの散歩』という題名を
見た時、「どこかで見たな・・」と思えたこと。これはまるで神経衰弱。
ねじれの位置にある本と出会えるのが、リアル本屋の醍醐味。
ネットではこういうことはあまりない。
関連性のある方へと、自動的に導かれるあの感じが嫌い。
誰と友達になるかなんて、あんたに指示されたくないし、これを読めとか買えとか
言われたくない。そういうのは私が決めます。数なんて多くなくていい。

私は出会えるはずのない本と出会いたい。
それはきっと、どこかにある本屋と呼ばれる場所なんだ。






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by iwashido | 2018-11-14 23:42 | 読書日記 | Comments(0)

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