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古本LOGOSの 月1,2回古書店。

1995年1月17日のこと。

1月17日  30年前のことを思い出してみる。
そのころ金沢に住んでたわたしと夫と1歳の息子(当時)は、金沢駅から特急北越に乗って新潟の実家に帰省する予定だった。その早朝に鈍い揺れがあった。けっこう長かった。「北陸は地震が少ない」と信じていた自分はビックリしてテレビをつけた。阪神方面。大阪や兵庫。通過地点という記憶しかなくて。何処か他人事で、でもとにかく金沢駅に向かってみることにした(出来れば帰省はしたかったから)。新幹線などできる前。北越でちょうど三時間着く駅まで。

案の定、大阪方面からの特急、関西方面に向かう特急は軒並み運休で、駅には多くの人だまりができていた。でも、北越は、金沢始発で新潟着だから大丈夫ではと思って駅員さんに聞くと、一つ前のは、運休した。次のがどうなるかは状況を見てまたお知らせします、と言う感じ。今より危機管理体制は緩い時代だった。そして少し待っていると、北越、動くみたい…電光掲示板に表示が…うそでもなんでもいい、とにかく乗っちゃえ、と自由席特急券買って家族三人とボストンバッグ持って乗った。まだ携帯電話一人一台なんて夢にも思わなかった時代。駅ホームの公衆電話から実家に電話し、少し遅れるけど、動きそうな電車に乗ったから向かうね、と伝えた。


実家に着くと、父はずっとテレビを見ていた。倒壊したビル、折れた高速道路、燃え上がる火の手、なんなの、何が起きているの、情報はラジオかテレビ見るしかなかった。この頃がわたし的には時代の最長点だったような気がする。村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』の最初に収録されている作品で、妻がずっとテレビの地震のニュースを見続けて、突然いなくなり離婚届が送られて来る展開が今ならよくわかる。本当に天災というのはある日突然降って来て根こそぎ生活を失わせて命まで奪っていってもう取り返しのつかないギリギリのところまで人を追い込む。生き残ったのは奇跡、生きて居るのも奇跡、明日が来るか来ないかわからない、ほんとうはみんなそういう存在生起の尾根づたいにギリギリの生を生きて居るのに、予定や約束や未来が手形のように発行されてなんかなまるぬいお風呂に入るような日常が続くと思っている。
わたしの還暦は、大地によってセレブレーションを受けた。祝福なのか呪いなのかは現時点ではよくわからない。一年たったいまでも、30年経ったいまでも、地震には敵わないのだな人間、と思うしかないと思っている。
ミミズでもかえるでも、雉でもヒヨドリでもいいから、どうか地球を救ってください。奇跡は起こるのだろうか…先行きの見えないこの世界で。

その時その時でもちろん紆余曲折や浮き沈みはあったのだが、

トータルで考えると、地震によって私の場合は古いタガが外れ、どちらかと言えば良い方向に向かおうとしている、向かうしかない、舟出したアイルランド難民のような気分かもしれない。。まだ見ぬ新大陸を目指して、漕ぎ続ける。

1995年1月17日のこと。_c0107612_09155454.jpeg


by iwashido | 2025-01-21 09:16 | 朔のつぶやき | Comments(0)

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