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LOGOSさんの月に1,2回古書店

2020年 03月 07日 ( 2 )

橋本治が生きていたら

今の日本の状況を、橋本治だったらなんというだろう。
「遠い地平、低い視点」というタイトルのエッセイを、PR誌ちくまに連載していた。
それが昨年1月末に突如として断ち切られてしまった・・・
逝って1年ちょっと、その1年がとてつもなく昔のことのように感じられる。

病での入院体験すら記事にしていた、そしてその連載エッセイをまとめた新書(ちくま新書)
のタイトルは『思いつきで世界は進む~「遠い地平、低い視点」で考える』である。
今手元にあるのは3刷であるが、初版をゲットできなかったことは今更だが悔やまれる。
初版発行日は2019年2月10日、死を予期していたかのようなタイミングでの出版となってしまった。

大変多作な作家で、また研究熱心で、編み物から古典文学から、桃尻な高校生の気持ちまで
創造力で補えるすごい才能の持ち主だったと思う。枠にはまらない、はまるつもりもない、
はみ出すつもりすらなく、鳥の視線、もしくは海獣の視点を持ち得る人だったように思う。
お前ら、ほんとにこのまんまでいいの? おれはもう死んじゃったからどうでもいいけどさ、
生きてるお前ら、何かできることあんじゃねーの、俺もう知らないよ。

”「危機意識」はないのか?” と題されたエッセイは2017年10月のものだが、
その中に「将来日本人は三行以上の文章が読めなくなる」と勝手に思っている、と書いているが
もうすでにそうなってるんじゃないのーーーー
長い投稿はスルーだよね。口当たりのいい、わかりやすいコメントやフレーズばかり
飛び交って、つらつらと回り道をして考えることはすでに時代遅れか。
「反知性より無知性がこわい」「ニュースがどんどん下りて行く」
「電波で荷物は運べない」「「バカ」という抑止力」などなど、今こそ読み直したい
橋本治節満載である。時系列順でないが、それがかえって今まさに読んでしまっている。

by iwashido | 2020-03-07 17:11 | 朔のつぶやき | Comments(0)

光射すほうへ・・・(行けるかな?)

ある朝悪い夢から目覚めると、ザムザは学校勤務の職員になっていた。
あれ、昨日までは誰も来ない寒い店で古本を売っていたんじゃなかったっけ。八十四日間一冊も本が売れなかったので、どうしたことかと毎晩頭を抱えていたのだった。そうか、今は本を売る人じゃなくて、守る人・保管する人・貸し出す人になったのだった。
ザムザは公僕として、忠実に仕事をした。やらなけけばならない以上に、時間も精神も注ぎ込み、「あるべき姿」もしくは「ルール」を利用者に徹底しようとした。ところがやればやるほど、ザムザは周囲からういてしまうのであった。たとえば。黙って本を持ち出そうとする利用者に手続きをするよう、所定の用紙に記入する、もしくはカウンタで手続きするように声をかけると、その男は「チッ、うるさいヤツ」というような眼差しでザムザを侮蔑するのだった。まるでザムザがいることが悪いことでもあるように。今まで俺たちは、好き勝手にここにあるものを持ち出しても良かったのに。返すのも、読み終わってからで誰にも何も言われたことはなかったのに。2週間や3週間の貸し出し期間じゃこんなにたくさん文字がある本なんて読めやしない。ほかにもたくさん宿題があるのに。まるで、借りたものを期限以内に返せというザムザのほうが悪人になった気分だった。
ザムザは考えた。そうか、ここに必要なのは、本を管理する人ではないんだ。ただこの空間を利用者の好きなように使えるよう、控えめに、主張せず、理想を押し付けないひとが求められているのか。それなら自分はこれ以上ここにいる必要はないんだな。そう思ったら、なんだかひどく無駄な時間を費やしてしまったな、と思えた。
おりしも、特効薬のない悪いウイルスが流行しはじめた時期だった。住民は外出しないよう、施設やイベントも次々と閉鎖されている。もう誰もこの場所に来る人はいないようだ。そうか、俺も好きなところに行けばいいんだ。ザムザは突然すべてを了解した。
明日からは違うザムザとして、この世界に存在しよう、そう思った。
(このお話はフィクションです。/FB投稿より転載)

by iwashido | 2020-03-07 08:45 | Comments(0)

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